実名/匿名/顕名、誹謗中傷対策
これはきわめて私的な経験だが。
ネットで「敵にまわす」のは、コメントスクラムやネットイナゴだけなんだろうか?
などと疑問に思ったりしたので、書いてみる。
私の作成したテンプレートは、「連載小説用」という心づもりであったから、一般のダウンロード数はあまり気にならなくて。以前からWEB小説関係で交流のある方が二人、まったく知らなかった書き手さんが一人、実際に小説連載用として使用を開始してくださったのが、ひたすら嬉しかった。
そんなときである。
《FC2》の足跡システムに、見知らぬブログが引っかかった。紹介文から見て、アダルトっぽい。本来、アダルトブログは「足跡」がつかないように設定してあった。だから、足跡がつくということは、アダルト内容でありながら、アダルトカテゴリー指定していない、《FC2》内規上、かなりグレーなブログということになる。
そこがなぜ、うちに足跡を?
と、開いてみると。
私の作成したテンプレートのユーザーで。
でかでかと、ヌード画像入りの広告が貼られていた。記された文言は、
「輪姦ツアー参加者募集」
無論、私とて、それが本当の犯罪行為の共犯者募集だと思ったわけではない。そのように演じられる、しかるべきビジネスなのだろう。
だが。そういうビジネスを企画し、実行し、広告を出させている当事者は、いったい、どういう業種の人々か?
そして……、ブログの管理者は。無邪気なアダルト・アフィリエーターか、それとも??
ブログテンプレートが共通するということは、「その」広告が貼られたブログと、私が心から嬉しく思った3つの小説ブログは、同じデザインになる。見た目、そっくりになる。それが、いやだった。本当にオゾケを振るうほどに、不快だった。抗議することは、たやすいが。それが「彼ら」のビジネスを阻害したと見なされた場合に、私の身にはいったい何が起こり"うる"のだろう? むろん可能性の低い話だ。それでも、「こわい」と思った。けれどそれを放置するには、不快感は大きすぎた。
幸いにして、『ブログで小説』と、実名時代を結びつけるリンクや記事はWEB上に残っていない。一番ありうるのは、『ブログと小説』や私の管理する他ブログやサイトに荒っぽいコメントが湧くくらいだろう、と思った。少しでも被害を小さくするために、できる限り周辺ブログとのリンクを切ったあと、私は、抗議のコメントを送った。いざとなったら、『ブログで小説』は捨てる気だった。
そして、
結局。
あっけなく、テンプレートは変更されたのである。
ビジネスとして、組織として、力をもつ相手の、意に抗うとして。
しかるべき場所に、「コメントを送った私」と「リアルの住所氏名」を紐づけるデータが格納されている。
そのデータのセキュリティを、私は完全に信頼することができただろうか。
実名と「紐付け」がなされていないから、あのとき私は抗議に踏み切れた。そしてテンプレートを変更してもらえた。
けれどもし、実名ブログであったら、私はあのとき抗議する勇気がもてなかっただろう。自分の出したテンプレートによって、自分がいいと思うブログと、嫌悪感を抱くブログが「同じデザイン」になったことに、悶々としつづけただろう。
以上、
襲われる身の危険を感じている人に対して、
「仮に襲ってきても後で法が厳正に裁くから全体の秩序は公正に維持される、だから実名を出しなさい」
と言うのと、
「襲われてからじゃ遅いから、未然に防ぐために実名は出さないようにしなさい」
と言うのとでは、果たしてどちらが説得力があるでしょうか?
(『国内亡命者日乗』「インターネットは合議政体か? Max Heart」)
を拝読して思い出した話。
ああ、そうだ。
アノトキ書けなかったこのエピソードが今は書ける気持ちになったのは、くだんのブログが消滅したからである。