鼻先を空に向けて、町の匂いをかぐ

 どこぞの悪い狐は、大変に疑い深いので。誰かが、「どこどこの町は○○だ」と言っても、あまり信用しない。とりあえず、とことこと、見晴らしのいい丘のうえまで、町の匂いを嗅ぎにいく。


 《F》の町、狐めの知り合いはいい方が大変多いのに、町の匂いはあまりよくない。アフィリエイトとアダルトの臭いに、鼻先に皺を寄せる。でも、なんでも受け入れる自由もまた、《F》の特徴なのだから仕方ない。
 《A》の町は、なぜかコピペが多い。いかにもアフィリエイトらしい同じタイトル、同じ書き出し、でもURLだけが違う。
 《Y》は《F》や《A》に比べればキレイなものだ、と、狐は思う。しばらく嗅ぎまわっても、狐の嫌いな「てんさい」の匂いは、実はそんなにしなかったりもする。
 《H》は匂いが嗅ぎ取りにくい。それでも、根性だして1軒ずつ扉を叩けば、そこそこご馳走にありつける。
 狐が一等好きなのは《E》なのだけれど。狐めはもともとここで育ったのだから、水が合うというヤツなのだろう。そしてここは、町民しかこの丘には登れない。


 どんな匂いが好きかなんて、みんなそれぞれ違うのだから。どの匂いが好きだとはいえても、どの匂いがいいとか悪いとか誰か一人が決められるものじゃ、きっと、ない。
 たくさんの匂いを嗅げば嗅ぐほど、「どこどこの町は○○だ」と簡単にいうのは難しいのが判ってくる。
 誰かに道案内を頼むことはできるけれど、そうすればかならず、案内してくれた人の好みと偏見が入ってくる。
「e氏のブクマからだけ──を見たって、一番たくさんの人たちがどんなことをしてるかはわからんよ」
 悪い狐はお行儀悪く後ろ足をあげて耳のあたりなぞ掻いた後。またどこかへ遊びにでかける。


[参]「町」を単位とする点に疑問を抱く。